三方を山、川、空に囲まれ、過去・現在・未来を見据えた場所
400坪近い土地に数年ごとの増築を見据えた個人邸の計画。若い夫婦と子供のための住宅と仕事場である。北、東、西の三方は山々に囲まれ、南に一級河川が流れる自然に恵まれた土地である。その自然をできる限り上手く取り入れ、風景に調和する集落的な建築群を将来に向けていかに形成していくかに主眼を置いた。
ここでは、建物を東西に長く伸ばし、建物南側ではなく、建物北側の全面に窓を設けた。北側からの光は南の光に比べて均一に室内に入り、山々に反射した光は朝から夕暮れまでこちらを照らし、一日中柔らかな自然光を取り入れることができる。もちろん室内側からは山々の刻々と変わる景色を望むことができる。
子供の成長にとって時間の変化を感じ取るのは、時計からではなく、自然の移り様から感じ取ることが大事である。最低限必要な箇所には南側にも窓を設けたが、軒が深く庇の出も大きいため、強烈な直射光は入ってこない。この住宅を深く覆う庇は、増築を見据えた集落的な建築群を形成していく中で重要なファクターとなる。道路から見たとき、屋根の見付け高さが建物高さの半分以上を占めており、自然の中でのシェルターという感覚、そして、連なる不定形な山々に囲まれた人間の住居を合理的で単純明快な矩形で表現し、「自然と偽自然との偽調和」ではなく、「自然と人工物の調和」を図る。これがまさに集落的といえる調和と考え、コストと現代的な制約の中で建築を創造した。「三望居」の由来は、三方を山、川、空に囲まれ、過去・現在・未来を見据えた場所であることから。